
8月の投資戦略 平成11年8月2日作成
先月の株式市場をふりかえって
☆7月の株式市場は日本の景気回復期待を背景に上値を追い、平均株価は1万8500円台を回復した。しかし、日銀の円売り介入にもかかわらず円高が進行、米国株式市場の不透明感が強まり、利食い売りが増加。ただ、この1ヶ月間は情報通信、エレクトロニクス関連株に人気が集中したもののその反動らしきものは出ておらず、今のところは押目買い意欲が旺盛なことを裏付けている
人気株が砂上の楼閣になることに注意
☆自動車に代表される工業社会に替わって、日本の産業の核となろう情報通信関連株が人気を集めるのは当然かと思う。とくに、NTTや今月照会したソニーは中長期で日本の株式市場のコア銘柄となろう。しかし、ソフトバンクが4万円近くの株価を付け、東京電力の時価総額を上回るまでになったのは予想外だった。
☆さらに、多くのエレクトロニクス株は2002年3月期までの収益回復をかなり織り込み、成長株といわれる中小株の一部は急騰が続き従来の投資尺度では説明しにくくなった。これらの値動きは、@ バブル全盛期である1980年代に匹敵する金利低下の金余り現象、
A 日本の景気回復に疑問と持った投資家のグロース投資(成長株への投資)の集中化、が背景にあると思われる。これらの銘柄群は押目買いをしていれば儲かっていたため、発想の転換は難しいだろうが、「上がるから買う、買うから上がる」という砂上の楼閣商状にならないように注意したい。なぜなら、この8月はサマーバケーションに入りの投資家が多く、薄商いから株価が上下し易く判断を誤るような現実が起こる可能性があるためだ。
今後の政局と株式市場
☆70万人の雇用増を目指す緊急雇用対策や少子化対策を盛り込んだ第一次補正予算と、10月から施行を目指す「産業活力再生特別措置法案」と過剰設備廃棄の優遇税制を定めた税制改正関連法案が今国会(8月13日会期末)で成立、今後の焦点は9月21日の自民党総裁選挙前後の政治、経済日程だ。9月10日前後に4〜6月のGDPが発表され、その数字を見て来年の1〜3月期の景気を下支えするための第二次補正予算を組む動きとなるだろうが、金融再生法案で危機を乗り切り、安定してきた政権の経済運営(円高、金利上昇にいかに対処できるか)がマクロ面では鍵となる。
今後は徐々にバリュー株へシフトを
☆ミクロ面では、一連の政府の支援策を受けて各企業が再度リストラ、経営改革を進める動きが相次いで出てくるか、また「株式交換制」の創設によりグループ企業の再編や合併・買収が起こる(または被買集企業とならないように高株価維持策をとるか)のかである。☆米国の変調(米国の政策当局のコントロールが成功し、急落がないと仮定して)による日本への資金流入、日本経済の景気回復期待などから、相場が大きく崩れる要因は乏しい。
☆しかし、昨年(1998年)10月からの上昇トレンドが一旦は終了し、また物色動向に変化が訪れるとみられ、しばらく全体は調整局面入りする可能性が大きい。よって、徐々にバリュー株にシフトする投資スタンスをとりたい。
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