3月の株式市場見通し

平成11年3月5日


2月のまとめ

2月の株式市場は戻り歩調となった。月初は債券安(金利上昇)、円高を受けて銀行、不動産株が安くなったものの、その後は日銀の金融緩和政策決定、銀行の公的資金注入の仮条件決定、海外株式の堅調がありしっかりした展開となった。特に、店頭株や2部株は割安感の修正局面に入り、値を飛ばすものが目立つ。

景気が薄日をさそうとも楽観は禁物

1月のサラリーマン世帯の消費支出が前年比2.6%、1月の鉱工業生産が前月比0.8%増といった薄日が差すような指標が出てきているが、これは足元の厳しい景気の状況(下り坂にある景気)の踊り場にあると考える。ただ、株式市場は常に先読みしていくため、以下の3つの大きな変化から少しずつ明るさを感じ取ろうとしており、ハードランディング的なショックを迎える前までの暫くは(3月から6月くらいまでではないか)、株価全般は下値切り上げ型の動きをするのではないかと考えている。

第一は政治の変化だ。小渕政権は、自民党内部の反対を押しきって自自連立を実現させたほか、商品券のバラまきを含めた景気対策、金融システム対策を早期に決定した。また、経済状況の一層の悪化があれば、最後のカード(例えば消費税の一時的凍結、日銀の国債直接引き受け、不動産税制の抜本的な改革)を切る可能性も強く、変化を感じないわけにはいかない。

第二に、企業自身の変化だ。バブル崩壊後9年間先送りしてきた問題もいよいよ瀬戸際に追い込まれ、安泰に見えた大企業も本格的なリストラをせざるを得なくなり始めた。リストラとは、過剰設備の統廃合(工場の閉鎖、設備の廃棄、経営資源の集中)と過剰負債の削減(財務面でのリストラ)と過剰人員の削減(単にグループ間での人員移動だけでなく、本格的な雇用調整まで)である。

第三に株式市場の内的変化だ。負け組企業は株価下落という市場退出勧告を出され、一方で勝ち組企業や21世紀に向けて成長性が期待できる企業は高付加価値(高いPER)を許容されている。相次ぐ業績下方修正も同時にリストラ策を発表すれば、そのリストラ策の進展を期待し株価は一時的に上昇している。需給面では、個人投資家は機関化現象に嫌気が差して持ち合い解消売りの少ない店頭市場等に回帰し始めたし、外人投資家は日本株の持たざるリスクを感じ始めている。

よって上述の内容を鑑みれば、この三つの変化はあくまで根本的な「変化」に対する期待が先行しているため、それがいったん裏切られるとすれば逆に厳しいしっぺ返しを受けざるを得ない。

3月の見通し

3月末の株価水準は極めて重要である。もし平均株価が1万3000円を大きく割っていれば、生保の経営危機、年金の積み立て不足、多額の株式評価損が問題になり、今度は世界恐慌の引き金となるだろう。よって、政府は小手先の株価PKOで失敗した昨年の経験を生かし、今年はあらゆる手段を用意し待ち構えているというのがマーケットのコンセンサスだ。そのため、投資家は素直にそのトレンドに乗るのが賢明であり、1万4000円台半ばでのヘッジ売りが溜まるのに注意すべきだ。

今までの流れを汲んであくまで個別物色でいくべきだろう(バリュエーション上の割安修正はかなり進んでいるが)。そのなかで、NTTグループ{NTT(東証一部、通信=9432)NTTデータ(東証一部、サービス=9613)、NTTドコモ(東証一部、通信=9437)を含む}が人気の中心となるだろう。また、素材の代表である大手鉄鋼株まで物色の方向が広がるかどうか、には注意している。


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