克美の株式市場の視点

平成11年4月10日

日経平均は年初の水準である1万3000円台の安値から大幅に上昇、1万6000円台に乗せた。持ち合い解消売りを吸収する外人投資家の買いが継続しているほか、非常に低い金利となった定期預金から個人投資家の資金が一部流入したからである。個人は店頭株の利食いに力をつけ、材料株や低位株にまで手を広げる好循環が継続、資金の回転が効いている。

株価上昇の最大の理由は日銀による量的緩和(実質短期ゼロ状態)と言える。現在の株式市場は日銀のリフレ策を受けてミニ金融相場の様相を呈しており、当面は好需給を支えにリバウンド・トレンドが持続するだろう。当面とは投資家がファンダメンタルズの改善に期待を抱きすぎたと感じ、現実とギャップにリスクを考え始める時期、すなわち6月頃までと筆者克美はみる。

これは、米国の1992年当時の状況と似通っている。米国の金融当局が92年7月と9月に2度にわたって短期金利を引き下げたことで、資金が預金から株式にシフトしたことを思い出させる。しかし、日本経済の先行きは依然楽観は許されない。

98年の10〜12月期の実質GDPが戦後最悪になったように、日本経済の先行きに楽観は禁物だ。負債・設備・雇用といった3つの過剰問題、なかでも雇用環境は企業がリストラを加速し始めたことから日増しに悪化している。2月・3月の消費は、マインドの好転とは裏腹に想像以上に厳しいのが現実である。もちろん、産業競争力会議を主催しているように小渕政権も承知の上であり、景気対策を再び打ち出す可能性が大きい。だが、抜本的な構造改革に踏み切るような政治・経済環境にはないため、日本経済のプラス成長は早くて2000年度と筆者克美は考える。

よって、指標面でファンダメンタルズの改善が見えないと、平均株価は消費税を5%に引きげた影響で鉱工業生産が落ち込む前の97年1月安値、すなわち1万7000円台半ばを抜けるのは容易ではない。ただ、勢いがつけば上値を抜くこともあり得る。

前号へ

バックナンバーヘ

ホームへ


※これは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資の最終判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。


お問合せ・ご意見はこちらへ otoiawase@8katsumi.sakura.ne.jp