3月の投資戦略

平成12年3月8日

2月の株式市場を振り返って:危ういハイテク・IT銘柄

外人投資家の売り越しはあったが、投信や個人の買いが続き、2月の株式市場は底堅い展開となった。

プレイステーション2の発売前人気がすごいソニー、iモード成長期待が強いNTTドコモが株式市場全体を引っ張り、この二銘柄で66兆円強、東証一部の時価総額の14%強を占めている。投信などは上がるから買い、また買うから上がるという循環的構図となっている。

ニューヨーク・ダウが1万ドルを割り込んだにもかかわらず、NASDAQ※が連日、最高値を更新していること(世界のハイテク、IT関連株はNASDAQと連動性が強い)も買い安心感を誘っている。

とはいえ、現在のハイテク、IT関連相場は、70年代前半に米国でみられたニフティー・フィフティー相場、90年代はじめの日本の店頭株大相場にみられるような危険性を指摘する向きがあり、筆者も2月から懸念し始めている。

ソフトバンク(9984)やトランス・コスモス(9715)は、従来の一般的な投資尺度であるPER※やPBR※などを打ち破る革命的上昇となり、株式相場全体に刺激を与えた功績を評価したい。しかし、この株価を肯定すると外部環境の微妙な変化、たとえば原油価格の高騰や米国金利の上昇などをがいして見逃してしまう。

期待で買い上げられた株式相場は、いったん下落トレンドに入ると、信用残の重石や反動で、容易に高値から4割前後は下がる可能性がある。

また、10〜12月のGDPが弱い数字というのは市場のコンセンサスとなっているが、ミクロの企業業績の回復要因であるリストラや個人消費の低迷がマクロの回復を遅らせている点に注意すべきではないか。



※NASDAQ:全米証券業協会の後援のもとに開発された店頭株の自動気配システム。米国経済に好調をもたらしているシリコンバレーのハイテク株やインターネット関連株の多くがこのNASDAQに属している。よって、NASDAQ指数全体に対してハイテク関連株の占める割合が高く、ハイテク関連の株価の連動性が強い。

※PER:株価収益率。株価が1株あたりの税引後利益の何倍まで買われているかをみる指標。式は、株価/税引後1株利益。

※PBR:企業の純資産を株価で割ったもの。投資尺度の一種。


今後の銘柄選択の視点

よって、今後の投資先は、国際優良銘柄に徐々にシフトしながら新規資金ではグロース株(成長株)の突っ込み買いが賢明だろう。

一方、銀行などの旧来銘柄は持ち合い解消売りで軟調傾向で、株価も上値が非常に重くなっている。ただし、持ち合い解消売りは3月半ばまでがピークと思われ、レンジの下限にあると思われる電力株や鉄鋼株を売り急ぐ必要はないのではないか。

むしろ、内需の伸びは見込めないが、高品質でコスト競争力がある日本の素材メーカーは輸出の拡大による恩恵が大きい。

ところで、音楽産業を根底から変えるネット音楽配信事業は有望な市場だ。これらの関連銘柄を拾うのも得策かもしれない。

新年度入り後のキーワードは株主重視

昨年度(3月まで)は「時価総額の増大」が株式市場のキーワードだった。来年度(4月から)のそれは「株主重視=株主還元」ではないか。

発行済み株式数が多く、持ち合い比率が高い銘柄は、敵対的な買収や株価下落に備えるよう、自社株買いや安定株主づくりが不可欠となるからからだ。

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※これは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資の最終判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。


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