平成14年12月2日
11月の株式市場
☆11月の株式市場は主要銀行株、ハイテク株を中心に波乱含みの展開だった。
☆10月末に発表された総合デフレ対策や竹中大臣が唱える金融行政・不良債権処理を進めていけば、企業倒産や失業の増加をはじめ、メガバンク株が紙くずとなるなどとの懸念や金融恐慌に陥るのではないか、との不安がマーケット全般に広がった。
☆そのため、14日に日経平均株価の終値は8,303円とバブル崩壊後の安値を更新し、18日の東証一部の年初来安値銘柄は全体の3割弱にも及び、またメガバンクの一部が10万円の大台割り込んだ。
☆米国株は10月9日の安値(ニューヨークダウは7286、S&P500は776,76、ナスダックは1114)から大幅に上昇した。
☆中間選挙での共和党の大勝利、連銀の相次ぐ利下げ(FFレートの誘導目標は累計6%引き下げ)、そしてイラク情勢のひとまずの落ち着きにくわえて、悲観的なコンセンサスにくらべてクリスマス商戦にもやや明るさが出始めたことで、月末にかけてハイテク株と金融株の上昇が目立った。
☆さらに、日本の主力株にヘッジファンドなどによる買い戻しが加速したため、結局日経平均株価の月末の終値は9,200円を回復、月間の上昇率は6.7%となった。
今後の市場動向
☆11月末には金融再建プランの「作業工程表」が発表された。2004年度に不良債権処理を完結させるため、年内、年度内、来年度以降の三段階で実施している方針だ
☆がしかし、これはハードランディングシナリオを想定しているようには思えず、11月のように信用リスクから銀行株が売りたたかれ、低位株に売りが殺到する可能性は少ないだろう。
☆とはいえ、来年度の景気動向や企業業績動向、イラク情勢の行方、米国株の上値の重さ、株式需給関係を鑑みると、相場全体の戻りは限定的であって、むしろ膠着状態が長引けばその後の下値不安はより大きくなってしまう。
☆また、デフレのさらなる深刻化は小泉政権の失敗によるところも大きく、政局流動化リスクに目を向ける必要が出てきそうだ。
☆そのような経済環境のなかでは、リストラによる収益拡大にはもはや限界があり、増収を確保できる企業群が物色の基本となりそうだ。
☆具体的には、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話といった成長商品群や、喜び、安全、安らぎなどを提供できる企業群に注目する。
証券改革論議
☆一方、12月中旬に与党の税制改革大綱がまとめられる見通し。所得税の課税最低限の引き下げや外形標準課税の導入などの増税項目がある一方、土地税制、法人税、相続・贈与税、そして証券税制などの減税が現在も議論されている。
☆なかでも、証券税制は株式譲渡課税の税率引き下げと配当課税の引き下げを検討中だ。
☆配当課税の引き下げは短期的な株価対策ではなく、個人投資家の「投資意欲」を高めるには最善の手段であり、また買い手不在の日本株を下支えする効果としては非常に大きいと考える。
☆一方、企業側から見ても株価下落に対応した自社株買いよりも、配当性向を高めることで株主重視の姿勢を打ち出すほうがわかりやすい。流動性が乏しい二部株、店頭株はなおさらである。
☆そのようなことから、高配当利回り株は従来よりも早い時期に狙っておきたい(ただし、電力株全般を勧めることを意味しないが)。
※これは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資の最終判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。
お問合せ・ご意見はこちらへ otoiawase@8katsumi.sakura.ne.jp