平成15年5月2日

平成15年5月の投資戦略
波乱の4月の株式市場

イラク戦争の早期解決観測を好感したニューヨーク株式市場の上昇を受けて、日経平均株価は4月7日に月間の高値8,249円をつけた。

しかし、年金基金の代行返上に絡む売りや外人売り、そして株式評価損の拡大を嫌気した処分売りなどが断続的に出るなかで、国内の景気悪化や北朝鮮問題などの見送り要因も多く、買い手不在が深刻化、ほぼ一貫して値を下げた。そして、日経平均株価はバブル崩壊後の安値を更新し、4月28日には7,607円をつけた。

また、資本増強したにもかかわらず、大手銀行株が相次いで上場来安値を更新したほか、SARS患者が香港や中国で急増していることが伝わると、人気化していた中国関連株が全般的に売り物に押された。

さらに、ソニーが今期の経常利益47.5%減、当期利益56.7%減予想を発表すると失望売りが殺到し、2日連続のストップ安となって、市場では「ソニー・ショック」による収益悪化懸念が広がった。

そのため、日経平均株価は5ヶ月連続陰線を記録(TOPIXは4ヶ月連続でストップ)した。


「緊急株価対策」

5月の株式市場は「緊急株価対策」がどのようにまとめられるかが注目される。

日経平均株価の7,000円割れが視野に入ってくれば、さすがに政府・与党は「デフレ経済」や「不良債権問題」よりも「株価」が緊急政策課題になるだろう。

8日の経済財政諮問会議では、民間からの提言を受けて話し合われる見通しだ。銀行等保有株式取得機構の活用拡大、自社株買い規制の緩和、郵貯・簡保資金の活用、時価会計及び現存会計の適用停止・延期などが今のところ検討されている模様。

本来は配当二重課税の撤廃や譲渡益課税を一般的に無税とするなどの証券税制の全般的な見直し自体が求められるが、120兆円強ある簡保資金の株式運用比率の拡大(現行は3.8%)や政府保有株の年度内売却見送り、株式取得機構の拠出金撤廃(現行は8%)が現実的な選択と思われる。

いずれにせよ、現行の株価水準を睨んだ小手先の対応ではなく、株価下落にたいする危機感を政府・与党がマーケットに示してもらいたい。

とはいえ、足元の業績悪化懸念(とくに最終利益段階)にくわえて、小泉政権の構造改革はかけ声だけに終わり日本経済の先行きは見通せなくなったというシナリオを株式市場では折り込み始めており、たんなる株式需給対策による株価上昇の余地は限られよう。


業績急回復の大手電機9社

大手電機各社の2003年3月期の業績急回復はリストラ頼みだった。

しかし今後、各社の競争力の強弱や重点分野の違いは若干あるにせよ、大手9社の今期設備投資計画は1兆9,500億円(前年比15%増)と成長分野の「デジタル家電関係」向けに積極投資していく方針で、関連業界には恩恵を受ける企業も多そうだ。

もちろん、SARS問題が5月中に目処がつくかどうかを当面は見極める必要があるが・・・。

銘柄選択の視点

長期金利が過去最低水準に低下し、相場の方向性が依然として読みがたく、また不透明・見送り要因に事欠かないなかで、物色は強い銘柄の押し目を拾うかたちとなりそうだ。

それらは、おおかた事業の再構築を進め、バランスシートの健全化、選択と集中の経営をおこなってきた企業が多い。その結果が「強い」株価につながっている。


※これは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資の最終判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。


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