平成15年6月3日

平成15年6月の投資戦略
堅調だった5月の株式市場

5月の株式市場は概ね堅調に推移し、月末の日経平均株価は8,400円台を回復した。

月前半は、政府・与党による緊急金融経済対策にたいする期待が広がったほか、好決算銘柄を物色する個人投資家の積極的な売買を受けて、低位株人気が続いた。

しかし、りそな銀行が17日に公的資金の申請を発表し、金融システム不安が一時再燃したものの、旧長銀のような100%減資にならなかったこと、米国株が好調だったことなどから、月末にかけてハイテク、輸出株中心に上昇した。

業績発表を終えて

2002年度の業績発表がほぼ終わった。

市場コンセンサスとおおかた同じ水準とはいえ、上場企業の経常利益および営業利益はともに大幅な増益。人件費や諸経費などのコスト削減効果、不採算事業からの撤退といったリストラが増益幅を押し上げた(当期利益ベースでは期末にかけての株安などの影響によって赤字になった企業も目立った)。


2003年度も会社計画では2桁の経常増益予想となっている。

しかし、売上高の伸びはわずかにとどまっており、円高、国内景気・消費の低迷が長期化すること、SARSの影響が出たばあい、またはハイテク・半導体市場がマイナスとなれば、リストラ余地が少なくなる2003年どの増益幅は大幅に縮小、さらに2004年度には減益の可能性が高くなる。

現在は過剰債務を解消すべく財務体質改善を急ぎ、新たな設備投資を控える傾向が強く、キャッシュ・フローなどの決算数字上はよく見える。が、中・長期的な経営展望がはっきりせず、また競争力低下の危険性がある

このような傾向は上場企業、なかでも日本を代表する大企業に多い。

一方で、新興企業の2003年度の売上高は5.5%増の予想。

新興企業はデフレ経済下のなかニッチなマーケットで健闘、かつ積極経営で成長を遂げている。

このような差は個別企業で見れば歴然となるが、PER、PBRといった従来の投資指標でも割安感がある銘柄が多い点に注目したい。


好調な6月相場


足元の日本株の強さは米国株の上昇と季節的な要因によると要因によるところが大きいと思われる。

5月30日時点でニューヨークダウは昨年12月以来の約半年ぶり、S&P500は昨年7月以来の11ヶ月ぶり、NASDAQ総合指数は約1年ぶりの高値となった。

この米国株高を受けて、外人投資家の日本株の買い越しは6週連続となっている。しかしこれは、あくまでグローバル・ポートフォリオにおけるポジション調整の買いが中心と見られ、日本株の魅力と割安感によって「強気」になったわけではないと思われる。

また、例年のように需給面で「売り圧力」が後退しつつ、新規の資金流入があり、投資マインドの改善が見られるのが5・6月という季節的な要因が株価を押し上げている、と筆者は見ている。

銘柄選択の視点

以上のことから考えると、6月の相場全体は上値を試す展開となり
、米国株次第ではテクニカル面での上値の節目(日経平均株価では8,800円台)を抜ける可能性もある

以しかし、バブル崩壊後に延々と続く「日本の問題」が先送りされているなかでは、日本の代表的な銘柄群であるハイテク、銀行などをはずす一方で、進行銘柄、成長銘柄および低バリュエーション銘柄を拾うことが望まれる。


※これは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資の最終判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。


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