5月の株式市場の見通し

平成11年5月12日

当面の株式市場についての概説

世界的な過剰流動性が背景にあることから、3月に1兆8000億円強を買い越し、4月にも高水準の売買を行っている外人投資家の日本株に対する姿勢に当面変化はなさそうだ。

一方、金融株からスタートした物色も先月末には工作機械株や低位株の底上げにまで広がり(循環物色のステージが終了したと見受けられる)、含み益が拡大しながら投資意欲の増す個人投資家は積極的な売買を続けると見られる。

加えて、年金の新規資金流入がある5月の株式の需給関係は全体的に良好だ。

決算発表を迎えるにあたっての注意点

5月は決算発表が本格化する。

前中間期の発表時では、日本経済や株価が最悪の状態であっただけに前下期の収益は極端に落ち込むとした予想が大勢を占めていた。そのため、今期の予想は、その反動による見かけ上のプラスと経営者および消費マインドの好転、リストラによるコスト削減効果の顕在化で相当良くなったと感じるかもしれない。

その最中で、企業のトップが3つの過剰問題に対して、具体的な施策を明確にかつ時間を区切って打ち出せるかがポイントとなりそうだ。

現在、PSR、すなわち株価を1株あたり売上高で割った数字は、ある推定では米国1.82倍に対し日本は0.47倍と言う。それゆえ、企業の本格的な構造改革が見えてくると、PSR面で日本株の相対的な割安感が注目されることとなるだろう。

幸いにして、政府もようやく「産業力競争会議」を設置し、3つの過剰問題に対する支援を行うことを示した。特に、税制面からのアプローチが現実化すると、日本企業の底力、技術力、経営能力がクローズアップされるだろう。

しかし、日経平均株価の1万7000円台半ば、それ以上の各銘柄の上昇は、その辺りの期待感を十二分に織り込んだところと考えられる。未だに東証一部の3割強がPBR1倍割れとなっていること(21世紀に生き残れるかどうかの選別は続いている)や、米国株式市場で「成長投資」(成長性があればバリュエーション上割高でも株価は買える)が限界に近づきつつある部分を見落とさないようにしたい。

当面の投資スタンスについて

上記の理由から今月の選定銘柄には苦労した。推奨したい成長株はかなり買い進まれ、低位の素材株も大方バリュー上魅力的でなくなったためだ。

そこで、今月は目先でなく中長期で有望と思われるものにした。また、4月1日に「克美の相場見通し」で推奨した3つのグループ、すなわち

1.事業を絞り込み、コストダウンを進め、得意分野への経営資源の集中を行う企業

2.ブランド力、資本力、販売力を背景として、グローバル化を進めて発展していく企業、またはいこうとしている企業

3.技術力(日米の技術分野特許比較)またはマネジメント力があるため、高成長市場またはニッチな(すき間)市場で高シェアを維持しており、そのためデファクトスタンダードを確立している企業、または確立しそうな企業

の押し目を拾うことが有効だろう。

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※これは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資の最終判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。


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